軽量化・最適化

Quest(Android)向けに作り直すときの手順

目次

スタンドアロン機やスマホ向けのアバターは、PC版を少し軽くしたものではありません。制限の種類が違うため、別のデータとして作り直すつもりで取りかかるほうが結果的に早く終わります。

PC版のプロジェクトを複製したら、手を動かす前に「これだけは残す」を1つか2つ決めてください。ここを曖昧にしたまま削り始めると、全部を守ろうとして、いつまでも終わらない作業になります。

前提として、モバイル向けは「同じキャラクターの別バージョン」です。完全に同じ見た目にはなりません。それを受け入れられるかどうかが、最初の関門になります。

PC版とモバイル版の関係

まず、この2つがどういう関係にあるのかを整理します。ここを誤解していると、作業の方針そのものが立ちません。

同じデータをそのまま持っていくことはできない

モバイル側で動く端末は、据え置きのPCに比べて処理できる量が限られています。そのため、扱えるデータの量にも、使える表現にも制限があります。

この制限は「軽くすれば通る」という種類のものだけではありません。そもそも使えない機能がある、という制限も含まれます。だから調整ではなく、作り直しに近い作業になります。

逆に言えば、削る量を頑張って調整しても、使えない機能が残っていれば通りません。まず「使えるかどうか」を確認して、そのあとで「量が収まるか」を見る。この順番で進めてください。

アップロードは同じ名前のまま行える

PC版とモバイル版は、別々のデータでありながら、同じアバターとして紐づけて公開できます。相手の環境に応じて、自動的に適したほうが表示される仕組みです。

つまり、使う側が切り替えを意識する必要はありません。用意する側だけが、2つのデータを管理することになります。この仕組みを知っておくと、作業の目的がはっきりします。

2つで1体という考え方

PC版とモバイル版は、同じアバターの別データとして両方を持つのが基本です。片方に寄せて1つにまとめると、どちらの環境でも中途半端になります。

管理は増えますが、PC版はPC版として作り込み、モバイル版は割り切って軽く作る。この分け方のほうが、どちらの環境でも満足度が高くなります。使い分けの考え方は入口がスマホに広がって何が変わったかを扱った記事でも触れています。

ここがポイント

モバイル版は「劣化版」ではなく「別の作品」です。PC版と同じ見た目を目指すと必ず行き詰まります。何を残すかを決めて、残りは思い切って捨ててください。

作業前に決めておくこと

手を動かす前に、方針を紙に書き出しておくと迷わなくなります。決めるのは2つです。

何を残して、何を捨てるか

そのアバターで、絶対に譲れない要素を1つか2つ選んでください。髪型のシルエットなのか、瞳の色なのか、衣装の形なのか。人によって答えは違います。

選んだもの以外は、必要になったら削る対象です。この優先順位が決まっていれば、作業中に迷う場面がほとんどなくなります。逆に決めていないと、全部を守ろうとして何も進みません。

完成の基準を先に決める

どの水準まで下げれば完成なのかを、作業前に確認しておきます。基準はサービス側が公開している一覧に、端末の区分ごとに書かれています。

自分が使う環境の行を見て、そこを目標にしてください。数値を記事や動画から拾ってくると、前提の違う値で作業することになります。確認する場所を押さえておくほうが確実です。

使わない衣装は最初に外す

複数の衣装が入っているアバターなら、モバイル版で使う1着を決めて、他は最初に外します。作業対象が減るほど、この先の工程はすべて軽くなります。

後半になってから外すと、それまでの調整が無駄になることがあります。構成の確定は、いちばん先に済ませてください。

着せ替えを楽しみたい気持ちは分かりますが、モバイル版では1着に固定するのが現実的です。着替えたいときはPC版で、という割り切りができると作業がぐっと軽くなります。

使える表現の制約を理解する

モバイル向けでいちばん戸惑うのが、この部分です。数を減らす話ではなく、使えるものが違うという話になります。

シェーダーの選択肢が狭くなる

シェーダーは、光の当たり方や影の落ち方を決めるルールです。モバイル向けでは、使えるシェーダーがあらかじめ限られています。

PC版で使っていた高機能なシェーダーは、たいてい使えません。色替えや発光といった機能をシェーダー側に頼っていた場合、その表現は別の方法で作り直すか、諦めることになります。

見え方が変わる前提で組み立てる

シェーダーが変われば、同じテクスチャを貼っても印象は変わります。影の出方が変わり、質感が変わり、顔の見え方も変わります。

ここで「PC版と同じにしたい」と粘ると作業が止まります。むしろ、変わった見た目に合わせてテクスチャ側を調整するほうが早く仕上がります。影が付かないぶん、色を少し調整して立体感を出す、といった対応です。

顔まわりは特に印象が変わりやすい場所です。影が薄くなることで、平たい印象になったり、逆に明るく見えすぎたりします。実機で見ながら、テクスチャの明るさを少し調整するだけでも印象は戻ります。

透ける表現は扱いが難しい

レースや半透明の装飾は、モバイル向けでは再現が難しくなります。表示の順番が乱れて、透けるはずの部分が不自然に見えることがあります。

この手の表現は、思い切って不透明に置き換えるか、そのパーツごと外すほうがきれいにまとまります。中途半端に残すと、崩れた見え方だけが目立ちます。

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項目PC向けモバイル向け対応の方針
シェーダーの選択肢◎×指定された範囲から選ぶ
テクスチャの上限◯×大きく下げる前提で組む
揺れものの扱い◎◯本数を絞る
見た目の再現度◎◯守る要素を決めて割り切る

※使える範囲はサービスの更新で変わります。作業前に公式の案内で確認してください。

削る順番

方針が決まったら、実際の作業に入ります。順番はPC向けの軽量化と似ていますが、幅がずっと大きくなります。


PC版を複製して土台にする

完成しているPC版のプロジェクトを複製し、そこから削っていきます。ゼロから組み直す必要はありません。


使わない衣装と小物を外す

モバイル版で着るもの以外を削除します。ここでいちばん大きく減ります。


シェーダーを指定された範囲に差し替える

この時点で見た目が大きく変わります。驚きますが、想定内です。次の工程で調整します。


テクスチャを下げる

解像度と枚数を、モバイル向けの基準に合わせて落とします。まとめられる画像は統合します。


揺れものと仕組みを絞る

動きの計算は本数がそのまま負荷になります。効果の小さいものから外していきます。


足りなければ形を削る

ここまでで基準に届かない場合のみ、ポリゴンの削減に進みます。見えない場所からです。


テクスチャの削り幅は大きくなる

PC向けなら残せた解像度も、モバイル向けでは下げることになります。ここは割り切りが必要な部分です。

下げる順番と、下げてはいけない場所の考え方はテクスチャの解像度と枚数を減らす記事と同じです。顔まわりを最後まで守り、見えない場所から削っていってください。

揺れものは思い切って減らす

髪もスカートもアクセサリーも全部揺らしたくなりますが、モバイル版では絞ってください。動きの計算は本数がそのまま負荷になります。

優先するのは、正面から見たときに動きが分かる場所です。前髪や、スカートの前側。逆に、後ろ髪の内側や、細かいアクセサリーの揺れは止めても気づかれません。全部止めるのではなく、目立つ場所だけ残すという考え方です。

注意

モバイル版の作業は、必ず複製したプロジェクトで行ってください。PC版を直接削っていくと、完成したPC版が失われます。両方を残すことが前提の作業です。

確認とアップロード

作業が終わったら、実際に動かして確認します。ここを省くと、あとで作り直しになります。

制作環境の見た目は当てにならない

モバイル向けの見え方は、実機で確認するまで分かりません。制作環境の表示とは、光の扱いも表示の設定も違うからです。

書き出して、実際の端末で自分の目で見る。ここまでを1セットにしてください。特にシェーダーを差し替えた直後は、想像と違う見え方をすることがよくあります。

確認するときは、明るいところと暗いところの両方で見てください。片方だけで判断すると、別の場所に行ったときに顔が沈んだり、白く飛んだりします。

PC版と並べて見ない

並べて比べると、必ず見劣りします。そういうものです。比べるのではなく、モバイル版だけを見て「これで通用するか」を判断してください。

判断の基準は、そのアバターだと分かるかどうかです。守ると決めた要素が伝わっているなら、それで成功です。

初心者さん

モバイル版にしたら別人みたいになってしまいました。


編集部

シルエットと髪の色が残っていれば、たいてい同じ人だと認識されます。細部は見られていないので、そこを守ることに集中してください。

妥協ラインの決め方

最後に、どこで手を止めるかの話です。ここが決まっていないと、作業は永遠に終わりません。

守るものを1つに絞る

作業前に決めた「譲れない要素」が残っていれば完成、という判断でよいと考えています。全部を守ろうとすると、基準に届きません。

実際、人が他人のアバターを見分けているのは、シルエットと色の組み合わせです。細かい模様や質感は、動いている場面ではほとんど認識されていません。

自分のアバターは自分がいちばん細かく見ているので、どうしても違いが気になります。ただ、その視点で判断すると基準が厳しくなりすぎます。他人の目で見たらどうかを一度考えてみてください。

完璧を目指さないほうが続く

モバイル版の作業でつらくなるのは、PC版の記憶と比べてしまうときです。最初から別物だと決めておくと、精神的にかなり楽になります。

そもそも、モバイル対応の目的は「その環境の人と会えるようにする」ことです。見た目の完成度より、会える状態を作ることのほうが優先度は高いはずです。

いったん通る状態を作ってしまえば、あとから少しずつ手を入れられます。最初から完成形を目指すより、まず動くものを作って、気になった場所だけ直していくほうが続きます。

作り直しの負担を見積もっておく

これから買うアバターであれば、モバイル向けの対応が用意されているものを選ぶという手もあります。自分で対応させる作業がまるごと不要になります。

選ぶときに何を見ればいいかはQuest・スマホで使うときの選び方をまとめた記事に整理しました。買う前の数分の確認で、後の作業が数時間減ることがあります。

よくある質問

同じにはできません。使えるシェーダーが違うため、影の出方や質感がどうしても変わります。テクスチャの制限も厳しいので、細かい模様は再現しきれません。現実的なゴールは「同じ人だと分かる」ところです。シルエット、髪と服の色、目立つ装飾の位置。この3つが揃っていれば、動いている場面ではまず同一人物として認識されます。細部を諦めるかわりに、この3つを守る方針で組み立ててください。


基準は端末の区分とサービスによって変わります。運営が公開している制限の一覧に、環境ごとの値が書かれているので、そこで自分の使う環境を確認してください。作業としては、まず不要なものを外し、シェーダーを差し替え、テクスチャを下げる。この順で進めて、途中で基準に届いたらそこで止めます。届いていないのに形を削り始めると、必要以上に痩せたデータができあがります。


やることは多いですが、順番が決まっているので迷子にはなりません。時間がかかるのは、シェーダーを差し替えたあとの見た目の調整です。ここは何度か書き出して実機で確認する往復が必要になります。慣れれば短縮できますが、最初の1体は余裕を見てください。頻繁に着せ替えるアバターであれば、モバイル版は衣装を1つに固定してしまうのが現実的です。

まとめ

  • モバイル版はPC版の劣化版ではなく、別データとして用意する
  • 作業前に「守る要素」と「完成の基準」を決めておく
  • 使えるシェーダーが限られるため、見た目は必ず変わる前提で組む
  • 削る順番は、不要データ → シェーダー差し替え → テクスチャ → 揺れもの → 形
  • 確認は実機で。PC版と並べて比べず、単体で通用するかを見る
  • 基準値は端末とサービスで変わる。公式の制限一覧で自分の環境の値を確認する

これから選ぶ段階なら、買う前に確認する表記のまとめを先に読んでおくと、この作業ごと回避できる場合があります。すでに手元にあるアバターを対応させるなら、まずテクスチャの削り方から取りかかってください。

※対応している表現や制限はサービスの更新で変わります。作業前に公式の案内を確認してください。

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