はじめてガイド

アバターとVTuberモデルは何が違う?そのまま流用できるのか

目次

配信用に作られたモデルと、ソーシャルVRで自分の姿として使うアバター。どちらも3Dモデルですが、要求されるものが違います。だから「持っているモデルをそのまま持ち込めるか」は、条件によって答えが変わります。

この記事では、まず何が違うのかを整理し、そのうえで流用できる条件と、作り直しになりやすい条件を分けて示します。最後に、1体を両方で使いたい場合の設計の考え方まで進みます。

結論を先に言うと、形式の変換より先に「重さ」と「骨組み」を見てください。ここが合わないと、変換が成功しても実用になりません。

同じ3Dモデルでも、求められるものが違う

違いを一言でまとめると、「カメラに映る範囲」と「誰が処理するか」の2点です。この2つが、そのまま作りの差になって表れます。

まず言葉を整理する

「アバター」と「VTuberモデル」は、対立する2つの種類ではありません。どちらも人型の3Dモデルであり、違うのは想定されている使い方です。同じデータが、条件さえ合えば両方で使えます。

ただ、市場に出回っているモデルは、どちらかの用途を想定して調整されています。販売ページに「配信向け」「ソーシャルVR向け」と書かれているのは、その調整の方向を示しています。

だから判断は「種類」ではなく「条件」で行います。以下で見る違いは、その条件を読み取るための観点だと考えてください。

見られ方が違う

配信用のモデルは、画面に映る範囲が決まっています。上半身が中心で、角度も限られます。だから、映らない部分にコストをかける理由がありません。

一方、ソーシャルVRのアバターは全方位から見られます。真後ろからも、真上からも、至近距離からも見られます。手のひら、足の裏、髪の内側まで、誰かの視界に入る可能性があります。

動かし方が違う

配信では、顔と上半身の動きが中心です。カメラや専用の機材で顔の動きを拾い、それをモデルに反映させます。下半身は固定か、簡易的な動きで済むことが多くなります。

ソーシャルVRでは、全身が動きます。しゃがむ、手を伸ばす、指を折る、腰をひねる。全身トラッキングを使えば足も動きます。関節がどこまで用意されているかが、そのまま動きの自然さになります。

求められる軽さが違う

配信では、そのモデルを処理するのは自分のパソコン1台だけです。多少重くても、自分の環境が耐えられれば成立します。

ソーシャルVRでは、同じ場にいる全員の端末が、あなたのアバターを処理します。20人いる場所なら、20台が同時に描画します。重いアバターは、自分ではなく周囲に負担をかけます。

ここがポイント

配信は「自分だけが処理する」、ソーシャルVRは「その場の全員が処理する」。この違いが、軽さの基準がまったく変わる理由です。

配信向けモデルに多い作りの特徴

配信を前提に作られたモデルには、共通する傾向があります。これは手抜きではなく、用途に対する最適化です。

正面の情報量に寄せてある

顔まわりの解像度が高く、髪や瞳の作り込みが厚い一方、背面や足元は簡素になっていることがあります。映らない場所を軽くするのは、配信では正しい判断です。

そのまま全方位から見られる環境に持ち込むと、この配分が裏目に出ます。後ろから見たときの粗さが目立つ、といった形で表れます。

加えて、映らない前提の部分は、面が片側にしか作られていないことがあります。裏から見ると透けて見える、という状態です。配信では起きませんが、持ち込むと気づかれます。

表情まわりが厚い

配信用モデルは、表情の作り込みが手厚いことが多いです。顔の動きを細かく拾って反映させる前提なので、変形データの種類が豊富に用意されています。

これは持ち込み先でも活きる資産です。ただし、サービスによって表情の呼び方や枠組みが違うため、そのまま全部が使えるとは限りません。割り当て直しの作業が発生します。

全身の作りが薄いことがある

足の指、脇、腰まわりの関節など、配信では使わない部分の作りが省かれていることがあります。省略されていても配信では困りませんが、全身で動かすと不自然さとして現れます。

ソーシャルVR向けアバターに求められること

逆方向から見ると、持ち込み先が何を要求しているのかが分かります。

全方位に耐える作り

どの角度から見ても破綻しないことが前提になります。裏側の面が抜けていないか、髪の内側が空洞になっていないか。近づいて見る文化があるため、細部の粗さは気づかれます。

裏面が抜けている箇所は、3Dソフトで確認できます。持ち込む前に一度、全方位から回して見ておくと、あとで指摘される前に気づけます。

周囲への配慮としての軽さ

多くのサービスに、アバターの負荷を評価する仕組みがあります。基準を超えると、他の人の画面では簡略表示に置き換えられます。自分の姿が相手に見えていない、という状態です。

基準はサービスと端末によって変わります。公式の制限一覧で、自分が使う環境の値を確認してください。読み方は負荷評価の読み方をまとめた記事で詳しく説明しています。

近くで見られる前提

ソーシャルVRでは、相手との距離が近くなります。会話中の距離は、配信のカメラよりずっと近いことが多いです。まつげの形、指先、服の縫い目まで視界に入ります。

逆に、遠くから見られる場面も多くあります。イベント会場のような広い場所では、シルエットだけで誰か分かるかどうかが効いてきます。近距離と遠距離の両方に耐える必要がある、という点が配信との大きな差です。

メニューとギミックの仕組み

ソーシャルVRのアバターは、その場で衣装を切り替えたり、表情を固定したりできます。これはアバター側に、切り替えの仕組みが組み込まれているからです。

配信用モデルには、この仕組みが入っていないのが普通です。配信ソフト側で操作するため、モデル自体に持たせる必要がないからです。持ち込むなら、この部分は新しく組むことになります。

流用できるケースと、できないケース

違いを並べたところで、判断の材料を表にまとめます。

← 横にスクロールできます →

観点配信向けモデルソーシャルVR向けアバター
見られる角度正面中心全方位
処理する端末自分の1台その場の全員
重さの基準自分の環境次第サービスの基準に従う
全身の関節簡素なことがある必要
切り替えの仕組み外部ソフト側アバター側に組み込む
表情の量多い傾向サービスの枠に合わせる

※あくまで傾向です。個々のモデルによって差があります。

そのまま流用しやすい条件

  • 全身の関節が標準的な構成で揃っている
  • 背面や足元まで作り込まれている
  • テクスチャの枚数と解像度が過剰でない
  • 利用条件で、他サービスでの使用が許されている

この4つが揃っていれば、持ち込みはかなり現実的です。とくに、汎用の作成ツールで作られたモデルは、標準的な構成になっていることが多く相性が良好です。手順は作成ツールの使い方をまとめた記事も参考になります。

まず試してみる価値はある

判断に迷うなら、いきなり作り直さず、まず持ち込んでみるのが早いです。持ち込んだ結果、どこが引っかかるかが具体的に見えます。そこから直すほうが、想像で作り直すより無駄がありません。

初心者さん

試しに持ち込んで、うまくいかなかったら無駄になりませんか。


編集部

無駄にはなりません。どこで引っかかるかが分かるだけで、次にやることが決まります。

作り直しになりやすいケース

ここに当てはまる場合は、変換で押し切るより、目的別に用意し直したほうが早く済みます。

重さが基準を大きく超えている

配信用に高解像度のテクスチャを何枚も使っている場合、そのままでは基準に収まりません。削れば入りますが、削る量が多いと見た目の印象が変わります。

この場合は、持ち込み用に軽い版を別に用意する形が現実的です。同じ見た目を目指しつつ、素材の作りだけ変えるという考え方になります。

関節や骨組みが足りない

全身の関節が省略されている場合、動かしたときに不自然さが出ます。骨を足す作業は3Dソフトでの編集になり、初めての人には負担が大きい部分です。

足りない箇所が少なければ足す価値がありますが、広範囲に及ぶなら作り直しの検討に入ります。

表情の枠が合わない

表情の変形データは豊富にあるのに、持ち込み先が求める名前や構成と噛み合わないことがあります。この場合、データ自体は使えるので、割り当てをやり直す作業になります。

手間はかかりますが、ゼロから作るよりは軽い作業です。表情の数が多いモデルほど、割り当ての整理に時間がかかります。

判断に迷ったときの目安

直す箇所が3つ以内に収まりそうなら、持ち込んで直すほうが速いことが多いです。重さだけ、関節だけ、表情だけ、というように問題が1点に絞れている場合も同じです。

逆に、重さも関節も表情もすべて引っかかっている場合は、用途に合ったモデルを別に用意するほうが、時間も仕上がりも良くなります。愛着のあるモデルほど直したくなりますが、そこは切り分けて考えましょう。

注意

形式の変換ができることと、利用条件で許されていることは別の話です。他サービスでの利用や改変の可否を、必ず配布物の規約で確認してください。

1体を両方で使いたいときの設計

最初から両方で使うつもりなら、設計の段階で決めておくと後が楽になります。

厳しいほうの条件に先に合わせる

制約が強いのは、ほぼ常にソーシャルVR側です。負荷の基準があり、全方位から見られ、全身が動きます。こちらの条件で先に作れば、配信側はほぼそのまま通ります。

逆順にすると、配信で完成させたあとに大幅な削減が必要になります。削るのは、足すより判断が難しい作業です。

版を分けて管理する

1つのデータで両方をまかなうより、用途ごとに版を分けるほうが管理は楽になります。共通の素体を持ち、そこから配信向けと持ち込み向けを書き出す形です。

この形にしておくと、片方を調整しても、もう片方が壊れません。フォルダを用途別に分け、どちらの版かが名前で分かるようにしておきましょう。

持ち運びの形式を意識する

複数のアプリで使うことが前提なら、アプリをまたげる形式で書き出しておくと動きやすくなります。何が標準化されていて、どこまで互換性があるのかはVRMの仕組みを説明した記事にまとめています。

ただし、形式をそろえれば必ず同じ見え方になるわけではありません。アプリごとに描画の解釈が違うため、最後は実際に持ち込んで確認することになります。

制作を依頼する場合の伝え方

作ってもらうなら、使う予定のサービスを最初に伝えてください。「配信で使う」だけだと、全身や軽さの要求が伝わりません。両方で使う予定があるなら、その旨を含めて相談します。

あとから用途が増えると、追加の作業が発生します。分かっている範囲は最初に共有しておくほうが、お互いに手戻りが減ります。

依頼の時点で、負荷の基準についても話しておきましょう。「軽くしてほしい」だけでは基準が共有されません。使うサービスと端末を伝えれば、目指す水準がはっきりします。

よくある質問

条件次第です。全身の関節が揃っていて、背面まで作り込まれていて、重さがサービスの基準に収まっていれば持ち込めます。引っかかりやすいのは重さと関節の2点です。まず持ち込んでみて、どこで止まるかを確認するのが早い進め方です。利用条件で他サービスの利用が許されているかも、事前に確認してください。

活きますが、そのまま全部が使えるとは限りません。持ち込み先が求める表情の枠組みに合わせて、割り当てをやり直す作業が入ります。データ自体は残るので、ゼロから作るよりはずっと軽い作業です。表情の数が多いモデルほど、整理に時間がかかると考えておいてください。

制約の強いソーシャルVR向けを先に作るのがおすすめです。負荷の基準、全方位からの見え方、全身の動き。これらの条件を満たしていれば、配信側はほぼそのまま通ります。逆順にすると、あとから大幅に削る作業が必要になり、見た目の調整が難しくなります。

まとめ

  • 違いの本質は「映る範囲」と「誰が処理するか」の2点
  • 配信は自分の1台、ソーシャルVRはその場の全員が処理する
  • 流用の可否は、全身の関節・背面の作り込み・重さで判断する
  • 表情データは資産として使えるが、割り当て直しは発生する
  • 両方で使うなら、制約の強い側に先に合わせて版を分ける

持ち込み先を決めたら、次は形式と互換性の確認です。配布形式の違いと使い分けを押さえておくと、無駄な変換作業を避けられます。

あわせて読みたい