フルトラの始め方|方式ごとの違いと必要なもの
フルトラ(フルボディトラッキング)を入れるかどうかで迷っているなら、判断材料は「部屋」と「使い方」の2つです。方式ごとに必要な設置環境が違うので、部屋の条件で候補は自然に半分ほどに減ります。機材の比較から入ると、かえって決まりません。
この記事では、フルトラで何が変わるのかを先に整理し、そのうえで方式の仕組みの違い、設置の手間、アバター側に必要な条件という順で並べます。どの方式にも向き不向きがあり、優劣の話ではありません。
読み終わるころには、自分の部屋と遊び方に合う方式が1つか2つに絞れているはずです。そのうえで具体的な機材を調べれば、比較の時間は短くて済みます。
フルトラを入れると何が変わるのか
通常のVRでは、頭と両手の位置だけが実際に測られています。腰から下の動きは、そこから推定された結果です。だから座っているつもりでも、他人からは中腰に見えることがあります。
フルトラは、腰・膝・足首といった部位の位置を実際に測ることで、この推定を実測に置き換えます。結果として、座る・寝転がる・足を組むといった姿勢がそのまま伝わるようになります。
いちばん変わるのは「立っていないとき」
立って歩き回る場面では、フルトラの有無による差は思ったほど大きくありません。差が出るのは、座る、しゃがむ、寝転がる、体をひねるといった動きのときです。友達と床に座って話す時間が長い人ほど、恩恵を感じやすくなります。
ダンスや撮影でも効果ははっきり出ます。膝の曲がり方や重心の移動が伝わるので、静止画でも姿勢の説得力が変わります。目的によって優先度が変わる話なので、目的別のアバターと機材の優先順位と合わせて考えると判断しやすくなります。
入れなくても困らない使い方もある
会話が中心で、立ったまま話すことが多いなら、フルトラなしでも不自由は少ないでしょう。装着と調整に毎回時間がかかるため、遊べる時間が短い人には負担のほうが大きくなることもあります。
「入れたほうがいい」ではなく「自分の遊び方で効くか」で決めましょう。入れてみたけれど、結局つけずに遊ぶ日が増えた、という話は珍しくありません。
フルトラが効くのは「立っていないとき」です。床に座って話す時間や、撮影・ダンスの時間が長いほど投資に見合います。
方式は大きく3系統に分かれる
全身の動きを測る方法には、いくつかの考え方があります。仕組みが違えば、必要な設置も、得意な場面も変わります。ここでは代表的な3系統として整理します。
部屋に基準を置く方式
部屋の角に光を出す装置を設置し、体に付けた機器がその光を受けて自分の位置を割り出す方式です。VIVE Trackerがこの系統にあたります。位置の精度が出やすく、広い範囲を安定して測れるのが特徴です。
代わりに、設置の手間がかかります。装置を高い位置に固定し、電源を確保し、遊ぶ範囲全体が見渡せるように角度を調整する必要があります。賃貸で壁に穴を開けられない場合は、突っ張り棒や三脚などの工夫が要ります。
体に付けたセンサーだけで完結する方式
部屋側に何も置かず、体に装着した機器の中のセンサーで動きを推定する方式です。HaritoraXやSlimeVRがこの系統です。設置が不要なので、狭い部屋でも、引っ越しが多い人でも扱いやすくなります。
この系統は、絶対的な位置ではなく体の姿勢を測るのが得意です。使っているうちに向きのずれが蓄積することがあり、定期的に姿勢をリセットする操作が前提になります。慣れれば数秒で済む作業ですが、そういう性質だと知らないと不具合に見えます。
SlimeVRのように、自分で組み立てる前提の選択肢もあります。手を動かすのが好きなら費用を抑えられますが、そのぶん組み立てと調整の時間は自分で引き受けることになります。
離れた場所から動きを捉える方式
体に付ける機器を減らし、別の装置で全身の動きを捉える方式もあります。mocopiのように少数のセンサーで全身を推定するものや、カメラの映像から姿勢を推定するものがこの考え方に近い系統です。
装着が軽く、準備が短いのが利点です。一方で、細かい足の接地や、体が重なる姿勢では推定が苦手になることがあります。用途が撮影や配信中心なら十分に実用的です。
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| 観点 | 部屋に基準を置く | 体に付けて完結 | 離れて捉える |
|---|---|---|---|
| 設置の手間 | × | ◎ | ◯ |
| 狭い部屋への適性 | ◯ | ◎ | ◯ |
| 位置の安定 | ◎ | ◯ | ◯ |
| 装着の手軽さ | ◯ | ◯ | ◎ |
| 引っ越しのしやすさ | × | ◎ | ◎ |
※製品ではなく方式としての傾向です
部屋の条件で候補は絞れる
方式の性格が分かったら、自分の部屋と照らし合わせます。ここで無理をすると、買ったあとに使わなくなります。
まず測るのは「動ける床の広さ」
腕を広げて回っても物に当たらない範囲があるか。座って手を伸ばしても大丈夫か。この2つを実際に体を動かして確かめましょう。図面上の広さと、家具を置いたあとの実際の広さは違います。
床に座る遊び方をするなら、その姿勢のまま周囲に危険がないかも見ておきます。フルトラをつけていると、いつもより大きく動くようになるからです。
設置できる高さと電源
部屋に基準を置く方式では、装置を高い位置に据える必要があります。棚の上、突っ張り棒、三脚。どれを使うにしても、電源を取れる場所が近くにあるかを先に確認しましょう。延長コードが床を這うと、それ自体が転倒の原因になります。
充電と管理の手間
体に付ける機器は数が増えます。遊ぶたびに装着し、終わったら充電する。この往復が毎回発生します。置き場所と充電の仕組みを最初に決めておくと、続けやすさが変わります。
機器が多い方式ほど、この管理の負担が大きくなります。週にどのくらい遊ぶかを考えて、無理のない数を選びましょう。
装着に毎回時間がかかる構成は、遊ぶ頻度そのものを下げます。準備が5分を超えるなら、装着の順番や置き方を見直す価値があります。
アバター側に必要な条件
機材をそろえても、アバター側が対応していなければ思ったとおりには動きません。ここは見落とされやすい部分です。
骨組みが人型として正しく設定されているか
フルトラは、アバターの腰や膝、足首にあたる骨に動きを流し込みます。この骨組みが人型として正しく設定されていることが前提です。市販のアバターならたいてい問題ありませんが、独自の形をしたアバターでは対応していないことがあります。
四足歩行のアバターや、脚のない形のアバターでは、そもそも足の位置を反映できません。こうしたアバターを使う予定があるなら、フルトラとの相性は事前に確認しておきましょう。
身長とプロポーションの差
自分の身体とアバターの体格が離れているほど、動きのずれが出やすくなります。極端に背の高いアバターや、脚の比率が現実離れしたアバターでは、しゃがんだときに床にめり込む、逆に浮くといった現象が起きます。
この差はキャリブレーション(調整)である程度吸収できますが、限界もあります。フルトラを重視するなら、選ぶ段階から自分の体格に近い比率のアバターを候補に入れると扱いやすくなります。
揺れものと衣装の作り
スカートや長い髪は、動きが大きくなるほど破綻が目立ちます。座ったときにスカートが脚を突き抜ける、といった現象はフルトラを入れてから気づくことが多い部分です。改変で調整できる範囲でもあるので、気になったら手を入れましょう。
衣装によっては、作者が座り姿勢を想定した設定を用意していることもあります。まずは同梱されている設定や説明を確認し、それでも足りない場合に自分で調整する、という順番だと手戻りが減ります。
始めるときの順番
そろえる順番を間違えると、使えない期間が生まれます。次の流れで進めると無駄が出ません。
遊び方と部屋を確認する
座る時間が長いか、動き回るか。設置できる高さと電源があるか。この2つで方式を1〜2種類に絞ります。
ヘッドセットとの組み合わせを確認する
方式によっては、使っているヘッドセットや接続形態に条件があります。公式の対応情報で、自分の環境が対象に入っているかを確認します。
PC側の準備を整える
機器を認識させるためのソフトを導入し、接続の口が足りているかを確認します。無線でつなぐ機器が増えるなら、通信の混雑も考えておきます。
装着してキャリブレーションする
機器を体に付け、決められた姿勢を取って基準を合わせます。ここが雑だと、以降の動きすべてがずれます。落ち着いてやり直せる場所で行いましょう。
アバター側の見え方を確認する
座る、しゃがむ、足を組むといった姿勢を実際に試し、めり込みや浮きがないかを鏡で確認します。気になる部分は調整で詰めていきます。
うまく動かないときの切り分け
足だけ反応しない場合は、機器の割り当てか装着位置を疑います。全体がずれている場合は、キャリブレーションのやり直しが先です。使っているうちに少しずつずれてくるなら、体に付けて完結する方式の性質どおりなので、定期的なリセットで対応します。
接続そのものが不安定なら、無線の混雑や電池残量を確認しましょう。ヘッドセット側の方式との相性についてはHMDの方式ごとの違いと選び方も参考になります。
フルトラと顔の動き、どちらを先に入れるべきでしょうか。
会話が中心なら顔から、動きや撮影が中心なら全身から入ると満足度が高くなります。フェイストラッキングの導入手順も見比べてから決めるとよいでしょう。
使い始めてから気づきやすいこと
導入したあとに「聞いていなかった」となりやすい点をまとめます。事前に知っておけば、不具合と勘違いせずに済みます。
ずれは必ず出るものとして付き合う
どの方式でも、長く遊んでいると少しずつ実際の姿勢と表示がずれてきます。原因は装着位置の緩み、床との接地の判定、センサーの性質などさまざまです。完全にずれない構成は存在しないと考え、リセットの操作を手元で素早くできるようにしておきましょう。
床に座る前、ダンスを始める前など、区切りのタイミングで一度リセットする習慣をつけると、破綻したまま長時間過ごすことがなくなります。
装着の順番を固定すると再現性が上がる
付ける順番と締め具合が毎回違うと、調整の結果も毎回変わります。同じ順番、同じ位置、同じ強さで装着することを心がけると、キャリブレーションの精度が安定します。ベルトに印を付けておくのも有効です。
服装によっても変わります。厚手のズボンの上から付けた日と、薄手の日では位置が動きます。よく着る服の上で一度合わせておくと、日ごとの差が小さくなります。
周りの人の環境にも影響する
全身が動くようになると、動作の情報を送る量が増えます。人が非常に多い場所では、この違いが体感に出ることもあります。混雑した場所での挙動が不安定なら、まずは人の少ない場所で調整を済ませてから移動しましょう。
また、床に座る動作は周囲の人の視界に入りやすい動きです。イベント会場など、人が密集する場所では、動き方そのものに少し気を配ると気持ちよく過ごせます。
よくある質問
一般的には腰と両足の3点から始める人が多く、そこに膝や肘を足していく形になります。点数が増えるほど再現度は上がりますが、装着と充電の手間も増えます。まず3点で始めて、物足りなさを感じたときに増やすほうが、使わない機器を抱えずに済みます。方式によって増設できる上限が違うので、増やす予定があるなら購入前に確認しておきましょう。
できます。部屋に基準となる装置を置く方式は広さと設置場所を要求しますが、体に付けたセンサーだけで完結する方式なら、座って遊ぶ前提でも成立します。ただし立ち上がって腕を広げられる程度の余裕は確保しておきたいところです。家具の角にぶつかる配置だと、動きを抑えてしまい、せっかくの全身の動きが活きません。
人型として骨組みが正しく設定されているアバターなら、たいてい使えます。四足歩行や脚のない形のアバターは、足の位置を反映できないため対象外になります。また自分の体格とアバターの比率が大きく離れていると、しゃがんだときに床へめり込むなどのずれが出ます。調整である程度は吸収できますが、限界もあるため、選ぶ段階から比率を意識しておくと快適です。
まとめ
- フルトラが効くのは「立っていないとき」。床に座る時間や撮影の時間が長いほど価値が出る
- 方式は「部屋に基準を置く」「体に付けて完結」「離れて捉える」の3系統で性格が違う
- 部屋の広さ、設置できる高さ、電源の位置で候補は自然に絞れる
- アバター側は人型の骨組みが前提。体格の差が大きいとずれが出やすい
- 装着と充電の手間は毎回発生する。続けられる範囲の構成を選ぶ
全身が動くようになると、次に気になるのは顔です。表情まで広げる場合の条件はフェイストラッキングの対応の見分け方と導入手順でまとめています。